将棋会館との連携WGが取材に伺った第15回白瀧あゆみ杯決勝戦では、渡辺明名人・小高佐季子女流初段・松下舞琳さんが今後の将棋文化の発展に対しどのようなお考えをお持ちなのかインタビューを行いました。今回はインタビューの全文を公開します!
Q.今回強く逞しい女流棋士の方々のお姿を拝見できましたが、彼女たちが今後将棋文化発展にどのような影響を及ぼすことを期待しますか?
ーもともとこの大会は新人登竜門戦と銘打っていて、若いこれから活躍するような女流棋士の方に出場していただいて、争ってもらうことで、今後に向けての大きなモチベーションにしていただくという大会なんです。なので、実際にここから女流のタイトル戦なんかに飛躍していった方もたくさんいますので、お二人ともまだ10代で、凄く若いですし、これからますますステップアップしていくことを主催の白瀧呉服店さん含め、皆さんも期待されているんだろうなと思います。
Q.本日は名人も対局されたお二人も和装ですが、和装での対局はそうでない時と比べてお気持ちに変化などはあるのでしょうか?
ー将棋界における和服というのは、今日のような大会の決勝戦ですとか、私たちでいうタイトル戦とかの大きな試合の時に着るんですね。大きな試合に臨むということで、和服を着て指すというのがやっぱり将棋界のずっと続いてきた伝統でもあるので。まあ、実際タイトル戦なんかですと、和服を着てこそ映えるような対局場を主催者側に用意していただくことも多いので、着物を着て対局することはタイトル戦を用意していただいているという感謝の意味もありますね。ですが、やはり大きいのは脈々と受け継がれて我々の代まで来ているというところですかね。
となるとやはり、気持ちが引き締まる感覚がありますか?
ーそうですね。年間でいうと着物でやる試合の方が少ないんですよ。和服を着て指す将棋は2割とか3割とかで、それ以外はスーツで指す場合が多いので。なので、やはり特別感が出るのはそういうところが大きいのかなと思います。
Q.将棋は、勝利までの道筋が無数にあり、基本よりも応用の部分がとてつもなく大きい印象があります。「教える」という事を考えた場合、基本を越えてどの次元まで教える事が可能なのでしょうか?
ー誰がどのレベルの人に教えるかで全然違ってくるのですが、一般的には初心者やアマチュアの方、趣味として楽しむレベルの方がほとんどなので、そういった方にプロの将棋を見て楽しんでいただくというレベルまで教えるっていうのはそんなに難しいことではいんです。ただそこから将棋とか柔道とか書道とかだと段位があると思うんですけど、その段位をアマチュアの方でも初段、二段、三段とかと上がっていくのは大変で、それは必ずしも誰でもできるというものではないですね。多少はそういった向き不向きがあるので。初段前後、一般的にプロの将棋を見て楽しむには初段もいらないと言われていますが、初段くらいを目指すのであれば教えると言うことはそんなに難しいことではないです。ご本人が初段を目指すぞという意欲さえあれば、初段までは到達できると思います。
Q.最後にいま将棋に興味を持っている学生や若い世代にメッセージをお願いいたします。
ーいま将棋はおかげさまで色々なところで取り上げられていて、今回こうして取り上げていただいているのも昨今の将棋ブームも影響しているのかなと思います。一般的には将棋をやると頭が良くなるとか言われていて、それは本当かどうか分からないんですけれども(笑)、将棋っていうゲーム性は物事を順序立てて考えたりとか、物事を理論付けて考えられるようになったりだとか、あとは一つ前の試合を次に生かすだとか。例えば学生の皆さんだとこれから仕事されてとかあると思うんですけど、その色々な日常で将棋は役立つと言われてますのでそういったことと、あとはもう単純に将棋を楽しんでいただくのがいいのかなと思います。今やっぱり将棋を見るためのツールが凄く増えてて、将棋を見るなら1番いい時代であると言われています。なので、もしちょっとでも将棋に興味があるなと言う人はまずルールを覚えていただいて、あとはテレビとかインターネットでプロの将棋をみるところから始めていただくと凄く楽しめるので、是非お願いしたいなと思っていますね。
Q.和装での対局は、男性は凛々しく、女性は華やかで、見る側からしましたら対局自体の格があがる印象がありますが、お召しになる方々の気持ちにも影響はありますか?
ーそうですねあまり機会のない服装なので気合が入るというか。この和装も自分で優勝したいなという気持ちを込めて選んだのもあって、気に入っています。
Q.将棋文化を特にどの層に広めたいと考えていらっしゃいますか?
ー最近は藤井聡太先生の影響でたくさん将棋始めたっていう方が増えたと思うんですけど、女流でも”女流棋士かっこいいな”って思ってもらいたいので女性の方にたくさん将棋の楽しさを知ってもらいたいなと思っています。
Q.女流棋士の文化を継承していくために自身はどのような役割を果たして行きたいかなどのお気持ちを伺いたいです。
ー将棋をみて”かっこいいな”と思ってもらうのが女流棋士としては1番の役目だと思うので、自分は淡々と勉強して”この人見てて面白い将棋さすな”とか”かっこいい将棋さすな”って思ってもらえるような将棋を目指して行こうと思います。
Q.和装での対局は、男性は凛々しく、女性は華やかで、見る側からしましたら対局自体の格があがる印象がありますが、お召しになる方々の気持ちにも影響はありますか?
ー着物で対局するというのはあまりない機会なので、気持ちが入ったというか、普段の対局とは違う緊張感があったという感じです。
Q.将棋文化を特にどの層に広めたいと考えていらっしゃいますか?
ーやはり外国に広めていきたいと考えています。
Q.女流棋士の文化を継承していくために自身はどのような役割を果たして行きたいかなどのお気持ちを伺いたいです。
ー女流棋士になれたら普及面でも活躍したいですし、対局の方も見ている人たちに面白いと思ってもらえる将棋をさすことで普及とも関わっていきたいなと思います。
渡辺明名人にインタビューをした学生より
渡辺明名人はこちらの緊張して辿々しい質問に対しても分かりやすく例や補足説明を加えながら、丁寧に回答してくださいました。大盤解説後のタイミングにもかかわらず本当に有難うございました!
小髙佐季子女流初段と松下舞琳さんをインタビューをした学生より
受賞式の直後、小髙佐季子女流初段と松下舞琳さんは3時間程にも及んだ対局でお疲れなのにも関わらず将棋ワーキンググループからの質問に真摯に答えてくださりました。お2人の強さの理由が、どんなことにも真剣に向き合う姿勢から見えた気がしました。本当に有難うございました!
記事作成:森田佳乃子